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長戸大幸とthe★tambourines & OOM

the★tambourines & OOM

長戸大幸プロデューサーは様々なアーティストをプロデュースしてきました。特にミュージシャンに対して、バンド形体で音楽的なチャレンジをする機会を与えていく方法は画期的でした。
ビーイングからは1980年にマライア(MARIAH)がデビュー、メンバーには笹路正徳さん(Key.)、清水靖晃さん(Sax.)、土方隆行さん(Gt.)、渡辺モリオさん(Ba.)、山木秀夫さん(Dr.)、村川ジミー聡さん(Vo.)等、音楽史に爪痕を残し、今も各方面で活躍されている方々が在籍していました。プログレッシブ・ロック色の強かったマライアは自らのアルバムだけでなく、土方さんの『Smash The Grass』(フュージョン系)を始めとする数々のメンバー・ソロ名義の作品や、笹路さんがアレンジしたジャズ系の秋本奈緒美さんや作詞家の亜蘭知子さんの作品も含め、オールジャンルにおいて全てクオリティーが高く、アイドル全盛の80年代初期に衝撃を与え、音楽ファンを唸らせました。
長戸プロデューサー率いるビーイングには他にも沢山のミュージシャンが在籍しています。92年にデビューしたインストゥルメンタル・バンドのDIMENSIONも前述の方々同様ビーイングの精鋭、増崎孝司さん(G.)、勝田一樹さん(Sax.)、小野塚晃さん(Pf.)で結成、ジャンルの異なる音楽シーンでも活躍していた3人はフュージョンにジャンルを定め、現在まで25枚のオリジナルアルバムをリリース、多くのライヴも行なう等、今もハイペースで活動しています。また彼らはZARDを始めとする様々なアーティストのレコーディングに参加、さらに森川七月さん(from なついろ)のアルバムを始め、様々なアーティストのサウンド・プロデュースをしています。

長戸プロデューサーがバンドをプロデュースする場合、バンドが丸ごとプロダクションを訪れる形式よりも、このようにミュージシャン同士を組ませるパターンの方が多いです。そしてバンドの方向性を決めるにあたり、”まず専門店としてやっていく”というのがあります。例えばマライアならプログレッシブ・ロック、DIMENSIONならフュージョン、というような感じです。例えば、飲食店をやる時、看板を店の名前だけではなく、”和食””イタリアン””フレンチ”というように明確に打ち出した方が、通りがかった人にも分かりやすく、お店に入りやすい、というもの。
さらに、ミュージシャンに対しては、どんなジャンルの音楽にもチャレンジして精通するような姿勢が求められます。ロックもやればジャズもやる、というような事です。また演奏家としてだけではなく、例えば作詞・作曲・編曲家としても作品を残せるような取り組みも重要です。例えば、プロ野球で活躍しているトップレベルの選手は、アマチュア時代に”ピッチャー””ホームラン・バッター”を兼ねてきたマルチ・プレイヤーが多いです。

さて今世紀に入ってからも”専門店”のバンドがデビューして、音楽シーンに爪痕を残してきました。今回ご紹介するバンドは2つです。まず2001年4月「easy game」でデビューしたthe★tambourines(2009年に活動休止) 。松永安未さん(Vo.)中心の4人組のバンド。松永さんは、バンドの全作品の作詞を担当、シングルの表題曲以外の作曲も手がけています。ファッション・センスも卓越していました。結成前から亀井俊和さん(Dr.)は様々なアーティストのライヴサポートや、GARNET CROWの「二人のロケット」のレコーディング等に参加していました。また麻井寛史さん(Ba.)と共に愛内里菜さんのライヴサポートには初期の段階から参加していました。その麻井さんは、愛内さんデビューの前年に開催されたZARDの船上ライヴにも21歳で出演する等、経験を積んできました。レコーディング等のエンジニア、岡田達也さんは亀井さん、麻井さんと共に音楽制作をしてきました。
the★tambourinesは、スウェディッシュサウンド(90年代半ばにスウェーデンのトーレ・ヨハンソンがプロデュースしたThe Cardigansが元祖)に傾倒したサウンド作りをしました。松永さんがリスペクトしており、実際に声や雰囲気を活かしやすいジャンルでもありました。特に最新作の『switch』は多数のライヴ活動や作品作りをしてきた彼らの作品力、サウンド、ジャケット等、音楽の魅力の集大成になっています。
ちなみにスウェーデンは音楽輸出国として知られており、様々なジャンルにおいて良質な音楽を輩出してきました。70年代にアバ(ABBA)が米国を始め世界中で大ヒット、80年代には様々な北欧メタルのバンド、後半にはロクセット(Roxette)、90年代にはエイス・オブ・ベイス(Ace of Base)が音楽シーンを席巻しています。

2004年に結成したOOM(ウーム) (2009年に活動休止)は大賀好修さん(Gt.)を中心に、大楠雄蔵さん(Key.)、望月美玖さん(Vo.)の3人編成。大賀さんは結成までに95年から開始したRumble Fish、Steel and Glassやnothin’ but loveとしての活動や、ZARD、倉木麻衣さん、愛内里菜さん、稲葉浩志さん(B’z)を始め様々なアーティストのライヴやレコーディングにギタリストやアレンジャーとして参加してきました。大楠さんも同様に結成までにZARD、愛内里菜さん、三枝夕夏IN dbを始め様々なアーティストのライヴやレコーディングに参加、またhillsパン工場の初期に開催されていたTHURSDAY LIVE(洋楽カバー中心)に多数出演する等、様々なジャンルにも取り組んできました。
OOMは、望月さんの力強いヴォーカルを打ち出すべく、リスペクトしていた米国のラモーンズ(Ramones)等パンク系のサウンドに傾倒していきました。大賀さんの作曲は、あえて音域も広くないメロディラインにする事で、彼女のパワーを最大限に活かしました。CDデビューは2005年11月の1stミニアルバム「REVOLVER」ですが、それ以前からオリジナル作品、カバー曲を交えたライヴを重ねて、楽曲披露してリリースまでに改良していくという、正にバンドらしい柔軟な制作方針を貫きました。このデビューALには、特典DVDとして、2005年7月の愛内さんのライヴに参加した「里菜祭り2005」(大阪城野外音楽堂)、2005年9月に開催したOOM NIGHT(hillsパン工場)の模様を収めたDVDが付いている事からも、彼らの音楽に対する姿勢が伝わってきます。
この二つのバンドは現在活動休止ですが、彼らは今も様々なシーンで活動をしています。次号はさらにもう一つバンドを紹介して、今の音楽シーンに繋いでいきます。お楽しみに。


Being Works  第22回 the★tambourines & OOM
text by  Hiroshi Terao
# by music_aikouka | 2014-01-23 16:19 | 長戸大幸